空き店
長屋で借り手のいない空室のこと。「お化け長屋」では、この空き店が全部埋まると大家の態度が大きくなり店賃が値上げされかねないという理由から、住人たちが借り手を怪談で脅す騒動が始まる。
長屋で借り手のいない空室のこと。「お化け長屋」では、この空き店が全部埋まると大家の態度が大きくなり店賃が値上げされかねないという理由から、住人たちが借り手を怪談で脅す騒動が始まる。
吉原などの遊里に通い詰め、粋と洒落を身上にした江戸の伊達者。明烏では時次郎を廓へ連れ出す源兵衛・太助がこの役どころを担う。
手技で体をもみほぐす、江戸時代からの伝統的な職業。多くは盲人が携わった。お化け長屋では、長屋の連中が通りかかった按摩に幽霊のふりを頼み込む場面が笑いを呼ぶ。
骨董品の名や品名などを、息もつかせぬ早口で一気にまくし立てる落語の話芸技法。「金明竹」の後半で披露される上方言葉の長い口上が特に有名で、噺家の口跡の巧みさを直接味わえる聴きどころとなる。
見かけだけを取り繕った粗悪品を指す江戸言葉。江島屋騒動では、糊だけで仕立てた婚礼衣装が雨で崩れ落ち、娘の人生を狂わせる悲劇の発端になる。
気取らず、さっぱりとした美意識。着こなしや金の使い方、人付き合いにまで及ぶ江戸っ子の価値観の核で、「野暮」の対義語として今も使われる。
病気や飢えなどで道端に倒れて死ぬこと、またはその人。「粗忽長屋」では、浅草奥山で見つかった身元不明の行き倒れを、粗忽者の八五郎が長屋の熊五郎だと早合点することから、噺全体の騒動が始まる。
江戸時代の基本通貨単位。現代換算では諸説あるが、庶民の生活からするとかなりの大金で、落語では「一両拾った」「一両貸してくれ」といった金銭トラブルが噺の起点になることが多い。
江戸の貨幣単位で、一両の半分が二分にあたる。「牡丹灯籠」では、お露の霊が魔除けの札を剥がしてもらう報酬として伴蔵に渡す金額として登場し、悪事の代償を象徴する具体的な金額になっている。
落語家が一つの演目を披露することを数える単位。「では一席伺います」の口上から始まり、客はその一区切りの物語世界に引き込まれていく。
共同の井戸は長屋の情報網。水を汲みに来た女性たちが世間話をすることから、町中の噂が広まった。今のSNSに近い役割を果たしていたのかもしれない。
家督を息子に譲り、悠々自適に暮らす身分。落語では世間の道理をよく知る物知りの老人役として登場し、若者や与太郎を諭す場面によく出てくる。
魚介類を取引する卸売市場。目黒のさんまでは、日本橋の魚河岸から取り寄せた上等なさんまより、目黒で食べた庶民の味を殿様が恋しがるという皮肉が描かれる。
敵の屋敷に攻め込むこと。仮名手本忠臣蔵の後半では、四十七士が雪の夜に吉良邸へ討入り、主君の仇・師直を討ち取る最大の見せ場となる。
吉原遊郭で最高位に位置づけられた遊女の呼び名。「紺屋高尾」に登場する高尾太夫のように、教養と気品を兼ね備え、大名や豪商でなければ容易に会えない別格の存在として描かれる。
吉原最高位の花魁が、供を従えて禿や新造とともに練り歩く華やかな行列。紺屋高尾では、久蔵がこの花魁道中で高尾太夫の姿を一目見て恋に落ちる。
名奉行・大岡越前守忠相が下したとされる、機知に富んだ裁定の総称。「三方一両損」では、自ら一両を足して四両にし、拾い主と落とし主に二両ずつ与えるという、誰も損も得もしない解決法を見せる。
江戸時代における隅田川の下流域の呼び名。「船徳」「佃祭」「もう半分」など、水運と庶民生活が密接に結びついた江戸落語の舞台として繰り返し登場する、江戸の生活に欠かせない大河だった。
寄席や演芸番組の最後を締める、複数の演者による掛け合いや即興の答え合わせのコーナー。真剣勝負というより余興的な色合いが強く、その場の空気を締めくくる役割を持つ。
江戸時代の相撲番付で事実上の最高位だった地位(当時は横綱が常設でなかった)。千早振るでは、花魁に振られた竜田川が「大関まで昇りつめた相撲取り」として登場する。
江戸の大規模な商家のこと。「明烏」の時次郎の家や、「文七元結」「千両みかん」の舞台となる商家など、経済的に裕福な町人層の暮らしを描く人情噺や廓噺の重要な舞台装置となっている。
城の正面の門を大手、裏手や側面の門を搦め手と呼ぶ軍学用語。蚊いくさでは剣術の先生が、長屋の表口を大手、裏口を搦め手に見立てて蚊との「軍略」を授ける。
坊主頭の巨人の姿をした妖怪。「お化け長屋」では、長屋の仲間たちが布団に潜り込んでこの大入道に見せかけ、新しく越してきた度胸自慢の職人を本気で脅かそうとする仕掛けに使われる。
演じるのに長時間かかり、高い技量を要する落語の大作を指す言葉。「らくだ」「子別れ」のように、一時間近く演じられることもある人情噺・滑稽噺の大作が、落語通の間でこう呼ばれる。
茶道具の格付けで最高クラスとされる由緒ある名品の呼称。井戸の茶碗では、何の変哲もなく見えた茶碗が、実はこの大名物クラスの逸品だったことが物語の核心になる。
吉原の唯一の正式な出入り口。出入りする人数を役人が数えていたとされ、明烏では「大門で人数を数えている」という台詞が、のちにオチとして見事に回収される。
長屋を管理する存在で、単なる地主ではなく町の世話役でもあった。店賃の取り立てから揉め事の仲裁まで、住人の生活に深く関わる。落語にもよく登場する。
江戸町奉行のもとで働いた、今で言う捜査協力者。元は罪を犯した者が多く、町の裏事情に通じていたことから重宝された、少し陰のある役どころ。
旅籠や茶屋、遊郭などの女主人・経営責任者を指す呼び名。「ねずみ」の鼠屋の主人のように、商売の駆け引きの中心人物として描かれることが多い。
寺の住職を敬って呼ぶ呼び名。「転失気」では、医者から言われた言葉の意味が分からないのに知ったかぶりをする和尚の面目と、それを見抜く小僧との駆け引きが噺の中心構造になっている。
江戸時代の奉行所で、訴訟や裁判が行われた白砂を敷いた庭先のこと。「三方一両損」や「大工調べ」では、庶民同士の意地の張り合いがこのお白洲に持ち込まれ、奉行の名裁きへとつながっていく。
戦に敗れて落ち延びる武者のこと。蚊いくさのオチ近くでは、家に残った蚊一匹二匹をこの落ち武者に見立て、久六が仕留める場面が描かれる。
「落語」という呼び方が定着する以前に使われた古い名称。話の最後にオチを付けて聞き手を笑わせる構造そのものを指す言葉で、現在も滑稽噺を指してこう呼ぶことがある。
寺社が発行する、災いや悪霊を退ける護符。「牡丹灯籠」では、新三郎が家中の戸口に貼ることでお露の霊の侵入を防ぐが、伴蔵が金に釣られてこれを剥がしてしまい、悲劇が加速する。
三味線や小唄など、語りではなく歌や演奏を中心にした寄席の演目枠。落語の合間に挟まれることで番組全体にリズムの変化をつける、寄席プログラム構成上の重要な要素。
武士の身分・領地・城を剥奪する幕府の処分。「仮名手本忠臣蔵」では塩冶判官の切腹後、塩冶家は改易となり城が明け渡され、家臣たちは主家を失った浪人として散り散りになる。
幽霊や妖怪を題材にしながら、恐怖だけでなく笑いや人情も織り交ぜて聴かせる落語のジャンル。三遊亭圓朝が芸術の域にまで高めたことで知られ、「百物語」「牡丹灯籠」などの名作を生んだ。
新しい演者や役者が客の前に初めて姿を見せること。江戸の芸能界では、その年最初の披露興行を指すことも多く、季節の始まりを告げる行事だった。
相撲の世界を指す言葉。千早振るでは、花魁に二度振られた竜田川が「角界を廃業し、豆腐屋になり下がった」と語られ、噺の大きな転換点になる。
出番前の演者が控える舞台裏の部屋。着替えや道具の準備だけでなく、演者同士がその日の客の反応や噺の出来を語り合う情報交換の場としても機能した。
書画を表装して床の間などに掛ける美術品。「応挙の幽霊」では、実在した絵師・円山応挙の幽霊画とされる掛け軸から幽霊が抜け出してきて酒をねだるという、江戸の骨董商売と幽霊譚を組み合わせた設定になっている。
本を買わずに借りて読む江戸の商売、またその店。本が高価だった時代、庶民の読書文化を支えた。干物箱の善公はこの貸本屋を営む男という設定。
市川家が家の芸として選定した、勧進帳を含む十八の代表演目群。歌舞伎の最高峰とされるこれらの演目は、200年近く上演され続けている。
合戦で討ち取った敵将の兜が本物か確認する儀式。「仮名手本忠臣蔵」の幕開けは鶴岡八幡宮でのこの儀式から始まり、高師直と塩冶判官の因縁のきっかけとなる場面設定になっている。
口金で開閉する、蛙の口に似た形の小銭入れ。「お化け長屋」では、怪談に驚いて逃げ出した客がうっかり置き忘れていき、長屋の連中が「とんだ儲けもの」と喜ぶ小道具として使われる。
江戸の理容室。髪を整えるだけでなく男たちの社交場でもあった。世間話や噂話が飛び交う、いわば町の情報ステーション。
大名家の家臣団を統率する最高位の役職。「仮名手本忠臣蔵」の大星由良之助は塩冶家の家老であり、主君切腹後に仇討ちを主導する中心人物として、忠義と知略を体現する存在として描かれる。
隅田川の納涼・花火シーズンの到来を祝う、江戸最大級の年中行事。旧暦五月二十八日に催され、たがやはこの祭りの雑踏を舞台にした騒動を描いている。
屋根瓦を固定するための、長さ八寸ほどもある大きな釘。粗忽の釘では、ほうき掛け用の小釘で済むところをこの瓦釘を選んで壁を打ち抜き、隣家の仏壇を直撃してしまう。
寺社の建立や修繕のための寄付を募る際に読み上げられた文書。歌舞伎「勧進帳」では、弁慶が関所を通るため白紙の巻物を勧進帳と偽って堂々と読み上げる、物語最大の見せ場の小道具になっている。
寄席に入るための入場料。庶民でも手が届く値段で、仕事帰りにふらっと立ち寄る娯楽として落語は江戸の町に根付いていた。
明治政府が士族の家禄を廃止する代わりに交付した証書。素人鰻では、元武士の中村がこの証書を元手に鰻屋を開業しようとする、明治初期ならではの設定が描かれる。
ぼろ布や古紙などの廃品を買い集めて歩いた江戸の商売人。「井戸の茶碗」の清兵衛や、「らくだ」に登場する屑屋のように、正直者や気弱な小市民として人情噺・滑稽噺の主人公格を務めることが多い。
仏教において善行を積むことで得られるとされる利益。「後生鰻」のご隠居は、鰻やスッポンを買い取って川に放つことを「功徳」と信じて疑わず、その独りよがりな信心が鰻屋の商売を圧迫していく。
歌舞伎独特の様式化されたメイクで、役柄の性格を色と線で表現する手法。「仮名手本忠臣蔵」の高師直のような傲慢な悪役は、その権勢と嫌悪感を強調する隈取で描かれることが多い。
人力車を引いて客を運ぶことを生業とした、明治期に登場した職業。「替り目」の冒頭、酔った亭主を乗せて家まで送り届けるが、実はそこが亭主自身の家だったという伏線として描かれる。
幕府公認の遊里そのものを指す言葉。塀と大門で外界と隔てられた特殊な一画で、紺屋高尾や明烏など多くの人情噺・廓噺の舞台となった。
吉原などの遊郭を舞台にした落語のジャンル。「明烏」「紺屋高尾」のように、廓の華やかさと人情の機微を描く演目が多く、江戸庶民にとって縁遠い世界を覗き見る娯楽としても愛された。
合戦の様子を描いた物語のジャンル。蚊いくさでは、剣術の先生が繰り出す大手・搦め手・物見櫓・狼煙といった軍記物由来の言葉が、蚊退治に大まじめに転用される。
武家や商家に雇われて雑用をこなした男性の使用人。「牡丹灯籠」の伴蔵は新三郎の下男という立場でありながら、お露の霊に買収されてお札を剥がすという裏切りに手を染めてしまう。
落語家が座って話す一段高い舞台。座布団一枚の上で、扇と手拭いだけを使い、何人もの登場人物を演じ分ける。まさに一人芝居の原点。
演者が入れ替わるたびに座布団を裏返し、めくり(名前の札)をめくる裏方の仕事。前座がこの役目を担うことが多く、地味だが寄席の進行を支える欠かせない仕事。
軍記物などを調子をつけて語る講談の旧称。千早振るでは、隠居が知ったかぶりで百人一首の意味をでたらめに語り出す様子を「即興講釈」と表現している。
布地を染める染物職人、またその店。紺屋高尾の主人公・久蔵は神田紺屋町の染物職人で、久蔵が染めた美しい浅葱色はのちに「高尾染め」として評判になる。
朝鮮半島から渡ってきた茶碗の総称。素朴な見た目ながら侘び茶の世界で珍重された。演題「井戸の茶碗」の井戸茶碗も、この高麗茶碗の一種にあたる。
互いに対等な実力で打ち合う、将棋・囲碁の相手のこと。柳田格之進では、浪人の格之進と商人の萬屋げんべえが碁盤を挟んで結んだこの関係が、身分を超えた友情の礎になる。
人情噺や怪談噺と並ぶ落語の三大分類のひとつで、教訓や涙よりも純粋な笑いを追求する噺のジャンル。「時そば」「まんじゅうこわい」など、日常的な失敗や勘違いを軽妙に描く演目が多い。
オチだけの短い一口ネタ。まくらの中で軽く挟まれることも多く、一つの物語として完結した本編の落語とは違い、瞬間的な笑いに特化している。
江戸時代に流通した楕円形の金貨。井戸の茶碗では仏像の中から、もう半分では風呂敷包みの中から小判がざくざくと出てきて、物語を動かす。
上方落語で見台(小さな机)を叩いて調子を取るための拍子木。江戸落語にはない演出で、賑やかな上方落語らしい語りのテンポを生み出す小道具のひとつ。
歌舞伎役者など有名人の声や口調を真似て聞かせる話芸。落語の合間や寄席の演芸コーナーで披露され、誰の真似かを当てる楽しみもセットになった、江戸の物真似エンタメ。
酒場や酒にまつわるやり取りを題材にした落語のジャンル名。居酒屋はこの酒呑噺の代表格で、客と小僧の言葉のやり取りだけで最後まで引っ張る一席。
大工が直角を測るのに使うL字形の金属製定規。大工調べのオチは、奉行の「調べ」と、この差し金で寸法を「調べる」という職人言葉を掛けた地口になっている。
刀の鞘同士が触れ合うほど狭い場所という意味から転じ、「奥へ引っ込んでおいで」を意味する江戸のいきな言い回し。「青菜」で旦那が使うこの言葉を、植木屋が長屋で真似しようとして空回りする様が笑いを生む。
諸大名が定期的に江戸と領国を往復した幕府の制度。「ねずみ」の舞台となる宿場町は、この参勤交代や諸国旅が盛んだった時代の旅籠文化を背景にしている。
客から即興でもらった3つの言葉を使い、その場で一つの噺を組み立てる荒技。落語家の発想力と話術が試される、まさにアドリブの極致。
言葉の音が似ているものに掛けて笑わせるオチの技法。いわゆる語呂合わせ・言葉遊びのオチで、意味のズレそのものがおかしみになる、落語らしい知的な笑いの技法。
落語家が自分の教えを受けた芸人を呼ぶ際の敬称。単なる先生というより、芸だけでなく生き方まで含めて手本とする相手を指し、弟子は高座名も師匠から受け継ぐことが多い。
明治維新で禄を失った旧武士が、不慣れな商売に手を出しては失敗する現象を指す言葉。「素人鰻」はまさにこの現象を題材にした噺で、刀を捨てた男の悲哀とおかしみを描く。
落語や寄席演芸を彩る伴奏楽器。出囃子や合いの手として使われ、話芸そのものではないが、高座の空気を作る欠かせない存在。
その人が最も得意とする演目。歌舞伎の家々が得意演目を箱に入れて保管したことから「おはこ」とも呼ばれる。落語家にもそれぞれの十八番がある。
三味線の伴奏に乗せて物語を語る、人形浄瑠璃(文楽)などで用いられる語り芸。仮名手本忠臣蔵は歌舞伎と人形浄瑠璃の両方で270年以上演じられてきた。
遊女を抱えて客をとらせた店。「子別れ」の熊五郎が入り浸る吉原の店もこれにあたり、酒と女に溺れて家庭を顧みない江戸の男の転落を描く人情噺の定番の舞台装置となっている。
死者や幽霊を表す際に用いられる白い着物。「品川心中」の後半、生き恥をかいた金蔵がお染を脅かそうと幽霊のふりをする際にこの装束を借りるが、当の本人が一番怖がってしまうという皮肉な場面を生む。
石田梅岩が創始した、正直・倹約・忍耐を平易に説く庶民向けの道徳思想。天災では、短気な八五郎がこの心学の先生のもとへ送られ、格言に感化される場面が描かれる。
男女が合意のうえで共に命を絶つこと。「品川心中」では、廃業の危機に瀕した遊女が心中を口実に厄介事を清算しようとする、江戸の遊郭が抱えた影の側面が笑いの題材として扱われる。
街道の要所に設けられ、通行人や荷物を検問した江戸時代の施設。歌舞伎「勧進帳」の舞台・安宅の関のように、身分を偽って通過しようとする者と役人との緊張関係が、多くの物語の緊迫した見せ場を生んだ。
武士が自らの腹を切って命を絶つ、名誉を保つための刑罰・作法。「仮名手本忠臣蔵」では塩冶判官が即日切腹を命じられ、四十七士も討入り後に同じ道をたどる、忠義の完結を象徴する行為として描かれる。
長屋の住人同士の相談事やもめ事の仲介役を務めた古株の住人。「お化け長屋」では、杢兵衛が世話人の源兵衛と膝を突き合わせて相談し、借り手を怪談で脅して追い払う計略を練る。
入門したての若手噺家がまず稽古する、シンプルで演じやすい演目群。真田小僧・やかんなどがこれにあたり、落語の登竜門として位置づけられている。
船を操って客を運ぶ職業。船徳では、素人同然の若旦那が見よう見まねで船頭になろうとし、隅田川のど真ん中で立ち往生する騒動が噺の核心になっている。
現代の感覚で数億円ともいわれる江戸の大金の単位。「千両みかん」では、たった一房のみかんに千両という途方もない値がつけられ、価値観の逆転を描く上方落語ならではのブラックユーモアの核となっている。
大名や武家の当主が正妻のほかに迎える妻のこと。「妾馬」では、長屋の娘・お鶴が殿様の側室に望まれたことから、庶民の一家が武家社会に足を踏み入れる騒動が始まる。
落語に欠かせない、うっかり者・早合点の代表格。与太郎とは少し違い、本人は真剣なのに勘違いや失敗を重ねてしまうタイプで、「粗忽長屋」など噺の題名にもなっている。
傘の上で鞠や升を回す曲芸や獅子舞などを組み合わせた大衆芸能。落語と並んで寄席の番組を構成する色物の代表格で、視覚的な華やかさで客を楽しませる演目。
家の中心を支える太い柱。そこから一家を支える働き手を指す言葉として定着した。長屋暮らしでは狭い家でもこの柱が家族の象徴だった。
山野に棲むとされた巨大な蛇の妖怪。「夏の医者」では、医者と息子を丸呑みにする存在として登場するが、恐ろしい怪物としてではなく、下剤で腹を壊すどこかまぬけなキャラクターとして描かれる。
遊郭で豪遊する裕福な客を指す言葉。紺屋高尾では、染物職人の久蔵が三年かけて貯めた十両を元手に「流山の大尽」に成りすまし、高尾太夫のもとを訪れる。
桶や樽がばらばらにならないよう外側から締める竹や金属の輪っかのこと。「たがや」の主人公が生業とする道具で、「箍が外れる」という慣用句の語源でもある、江戸の暮らしを支えた職人道具。
鷹を訓練して野鳥や獣を捕らえさせる、大名や将軍家に許された狩猟の一種。「目黒のさんま」では、殿様が鷹狩りに出かけた先で庶民の味であるさんまに出会うという、身分の落差を生む発端の行事として描かれる。
長屋の家賃のこと。江戸っ子は「宵越しの銭は持たない」と言われるほど気前が良く、店賃を溜めて大家に催促される噺も落語の定番ネタ。
江戸随一の花火師・玉屋の屋号を、観客が花火を讃えて叫んだ掛け声「たまやー」。たがやでは、この定番の掛け声が最後に「たがやー」へと転じる地口オチが最大の見せ場になる。
威勢よく歯切れのいい言葉で相手を打ち負かす、江戸っ子らしい弁舌のこと。「大工調べ」で棟梁・政五郎が大家に浴びせる啖呵は、感情の爆発ではなく職人の理屈と誇りを言葉で分解する芸として名高い。
その場で支払わず、後払いにする江戸の飲食店の慣習。鰻の幇間では、奢ってくれるはずの相手に逃げられた一八が、ツケも払えず住所も偽って店を出る羽目になる。
サイコロを壺に入れて振り、丁半博打を仕切る役目の者。「へっつい幽霊」では、幽霊が生前ため込んだ金の出所として語られ、江戸の賭場における職掌のひとつとして言及される。
師匠に認められて内弟子・部屋子として芸を学び始めること。掃除や着物の手入れなど雑用から始まり、高座に上がる機会を少しずつ与えられていく、前座修行の出発点。
商家で丁稚の上、番頭の下に位置する奉公人の身分。文七元結の主人公・文七は鼈甲問屋「近江屋」に仕える手代として登場する。
商家に奉公する年少の見習い使用人。「茶の湯」の定吉のように、主人の言いつけを言われた通りに実行しながらも、知識不足から見当違いの品を買ってきてしまう役回りとして落語に頻出する。
落語家が高座に上がる時に流れる専用の音楽。演者一人ひとりに決まった曲があり、聞くだけで「誰が出てきたか」がわかる、いわば入場テーマ曲。
長い鼻と翼を持つとされる山の妖怪。「天狗裁き」では、妻・隣人・家主・奉行と同じ問いを重ねられ追い詰められた主人公の前に現れ、助けたと見せかけて同じ問いを繰り返す、入れ子構造の要となる存在。
漢方医学で「おなら」を指す古い専門用語。演目名そのものにもなっており、知らないのに知ったかぶりをした和尚が小僧に見抜かれ恥をかくという、演目全体の仕掛けの核となる言葉。
将軍の御殿の内部、とりわけ江戸城内を指す言葉。「殿中でござる」という台詞で知られるように、殿中での刀を抜いての狼藉は重罪とされ、「仮名手本忠臣蔵」の刃傷沙汰の重大さの前提となっている。
一枚の戸板を舞台上でひっくり返し、表裏に打ち付けられた二つの亡骸を一瞬で見せる、四谷怪談を代表する歌舞伎の仕掛け。視覚的な衝撃で観客を戦慄させる演出として名高い。
江戸から京都を結ぶ東海道に置かれた53の宿場町の総称。「品川心中」の舞台・品川宿は、その最初の宿場として栄え、江戸の玄関口として多くの遊郭が軒を連ねる町だった。
古びた品を安く買い取って売る、格の低い商売とされた江戸の古物商。火焔太鼓・道具屋・猫の皿など、目利きの逆転劇を描く噺の主人公として繰り返し登場する。
遊びや放蕩にふけって身を持ち崩した人のこと。船徳では、勘当同然に家を飛び出した若旦那・徳兵衛が「どうらくが過ぎて」船宿に転がり込む場面で使われる。
大工職人の親方・統率者を指す呼び名。「子別れ」の主人公・熊五郎は腕のいい大工でありながら、棟梁から受け取った仕事の報酬を家族に渡さず吉原へ使い込んでしまう、転落の発端を担う役職。
心学の教えを、身近なたとえ話でわかりやすく説く語りの技法。天災に登場する「夕立にあっても雨は恨めない」という例え話は、この道話の伝統的な語り口そのものである。
七七七五の音数律で恋の気持ちや世間の機微を詠む、江戸後期に流行した俗曲。三味線に乗せて歌われることが多く、寄席の音曲コーナーでも披露される庶民の歌謡文化。
賭博が行われた非合法の博打場。「へっつい幽霊」の幽霊が生前ため込んだ三千両には賭場で不正に得た金が混じっており、「後生鰻」「らくだ」など博打好きの登場人物が江戸落語にたびたび登場する背景となっている。
歌舞伎独特の様式化された退場の所作で、大きく足を踏み鳴らしながら花道を駆け抜ける豪快な演出。「勧進帳」の幕切れで弁慶が見せるこの所作は、歌舞伎を象徴する名場面のひとつとして知られる。
夏の暑さが厳しい時期に鰻を食べて精をつける習わしのある日。「後生鰻」は、この鰻を主役にした夏の演目で、生き物を助けることに固執するご隠居と、商売が立ち行かなくなる鰻屋の攻防を描く。
泥棒や盗みの企てを題材にした滑稽噺のジャンル。「芋俵」はその代表格で、緻密な計画がまったく無関係な偶然によって崩れていく可笑しさを描く。
生産者や卸と小売の間に立って品物を取り次ぐ商売。金明竹では「仲買の弥市」が取り次いだ骨董品七品をめぐって、支離滅裂な言い立てが繰り広げられる。
江戸の庶民が暮らした集合住宅。一棟に何世帯も入り、壁一枚で隣の生活音が聞こえるほど近い。井戸端会議やお裾分けが当たり前の、濃い人間関係の舞台だった。
江戸の村や町を治めた庶民身分の代表者。江島屋騒動では、婚礼の破談を告げる村の名主・源右衛門の家が、お里の悲劇の重要な舞台となる。
縄を編んで作った暖簾で、江戸の大衆的な居酒屋の目印とされた。「居酒屋」の舞台となる、繁盛しているとは言い難い小さな飲み屋の入り口に下がる、庶民の憩いの場を象徴する道具。
刃物で人を傷つける事件のこと。仮名手本忠臣蔵では、塩冶判官が松の廊下で師直に斬りかかった一件が「殿中での刃傷沙汰は重罪」として物語全体の発端になる。
笑いよりも人の情や涙に重心を置く演目群。滑稽噺と対になるジャンルで、親子の情や貧しさの中の優しさなど、じんわり効いてくる噺が多い。
その日高座にかけた演目を記録しておく帳面。同じ客が何度も来る寄席では、同じ噺を続けて出さないための管理が重要で、前座や楽屋番が欠かさずつける仕事道具のひとつ。
遊女などの奉公人が主家に仕える契約期間のこと。紺屋高尾では、高尾太夫が「年季が明けたら必ずあなたのところへ参ります」と久蔵に約束し、翌年本当に訪ねてくる。
一定の年限を定めて主家や遊郭に奉公する労働形態。「紺屋高尾」では、高尾太夫が「年季が明けたら必ず参ります」と約束し、実際にその通り久蔵のもとを訪れることで純愛が成就する。
室町時代に大成された、面をつけて演じる格式高い舞台芸能。歌舞伎「勧進帳」は、能の演目「安宅」を原典として作られたことで知られる。
煙を上げて味方に合図を送る古来の軍事通信手段。蚊いくさでは、蚊を燻り出す「蚊いぶし」を狼煙に見立てて、久六が大まじめに実行する。
明治9年、軍人・警察官以外の帯刀を禁じた政府の法令。素人鰻の舞台となる時代は、この廃刀令によって刀を失った士族が新たな生業を探さざるを得なかった激動期にあたる。
江戸時代の宿場町で旅人を泊めた宿。「ねずみ」では、かつて自分の店だった立派な旅籠「虎屋」と、今営む粗末な宿「鼠屋」の対比が物語の骨格になっている。
将軍に直接仕える、御目見え以上の格式を持つ上級武士の身分。「牡丹灯籠」のお露は旗本の家の娘として登場し、その身分の高さが、浪人暮らしの新三郎との恋の障壁として物語に影を落とす。
落語の演目そのものを指す言葉。同じ字を書く「話」と区別して使われることが多く、演者ごとに間や語り口が変わる、一度きりの生きた語り物という意味合いを持つ。
一人前の芸者になる前の見習い期間の少女を指す呼び名。花代が一人前の「玉」の半分だったことが名前の由来で、芸事の稽古を積みながら座敷に出る修行の身分。
絵や記号の組み合わせから言葉の意味を当てさせる江戸の謎解き遊び。看板や暖簾のデザインに判じ物を仕込む洒落も好まれ、答えがわかった瞬間の快感が愛された。
火事などの緊急時に打ち鳴らして知らせた小型の釣り鐘。「火焔太鼓」のオチでは、鳴り物に味をしめた女房が「今度は半鐘を売っておくれ」と言い出し、「おジャン」という洒落に落とし込まれる。
丈が短く綿入りの防寒着で、火消しや商家の奉公人が仕事着として愛用した江戸の実用衣。屋号や家紋を背に染め抜いたものも多く、着ている柄で職業や所属がわかることもあった。
商家で主人に代わって店を取りまとめる役職。奉公人たちの上に立ち、金の管理から交渉ごとまでこなす、いわば江戸版の店長職。落語では抜け目のない役として描かれることも多い。
町内の警備・連絡を担った自身番の詰所。芝浜では、勝五郎の妻が拾った小判の入った財布を、夫に内緒でこっそりこの番屋に届けている。
木造家屋が密集する江戸で活躍した消防組織。「め組」など町ごとに組が分かれ、纏を掲げて命がけで火事に立ち向かった、江戸っ子の花形職業。
上方落語で演者の前に置かれる小さな衝立。座った際の下半身の所作を客席から隠す目的があり、見台とセットで使われる、江戸落語にはない上方特有の演出装置。
冬のうちに切り出した雪や氷を、夏まで保存しておくための貯蔵庫。「千両みかん」では、真夏にみかんを探し歩いた番頭が最後にたどり着く場所として登場し、当時の食料保存技術を垣間見せる。
百本の蝋燭を灯し、怪談を一話語るごとに一本ずつ消していく江戸の肝試し遊び。百本目を消し終えると本物の怪異が現れると信じられ、演目名そのものがこの風習に由来する。
琵琶を弾きながら平家物語などを語り聞かせた盲目の芸能者。「耳なし芳一」の主人公はその代表格で、目が見えないがゆえに生者と死者の境界を越えてしまう存在として描かれる。
取り憑くと家が貧しくなるとされる神。落語や昔話では、意外と情に厚く滑稽に描かれることも多く、追い出そうとする住人とのやり取りが笑いを生む。
江戸の司法・行政を司った役所。町奉行所では「お白洲」での裁きが行われ、大工調べや三方一両損など、庶民のもめ事が痛快な名裁きで解決される噺の舞台になった。
答えようのない問いに、意外な一言で切り返して締めくくるオチの型。素人鰻では、鰻に逃げられた元武士が「どこへ行くんです」と問われ「鰻に聞いてくれ」と返す場面がこれにあたる。
隅田川など江戸の川筋で、船遊びや渡し船の手配をした宿。「船徳」では、勘当された若旦那が転がり込む先として登場し、江戸庶民の夏の娯楽・水運文化を象徴する場所として描かれる。
太鼓持ちとも呼ばれる、宴席で旦那衆を笑わせもてなすことを生業とした江戸の職業芸人。「鰻の幇間」の主人公・一八のように、見栄と嘘で場をつなぐ一方、懐事情は常に苦しかった。
俳諧の連句会で、最初に詠む句と最後を締めくくる句のこと。干物箱では、孝太郎がこの対になる俳句を善公に台本として仕込み、問答をしのがせようとする。
江戸城内にあった、松の絵が描かれた襖で飾られた廊下。元禄赤穂事件で浅野内匠頭が吉良上野介に斬りかかった現場として知られ、歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」では判官が師直に刃傷に及ぶ舞台となる。
遊女の年季や借金を肩代わりして自由の身にすること。「柳田格之進」では娘のお絹が父の名誉のために自ら身売りしかけ、萬屋の主人げんべえが直ちに身請けして事なきを得る、人情噺の重要な結末装置となる。
歌舞伎独特の演技様式で、感情が高まった瞬間に動きを止め、目を大きく見開いて決めのポーズを取る演出。「仮名手本忠臣蔵」の松の廊下や討入りの場面など、物語の緊迫した局面で役者の存在感を際立たせる。
珍しいものや怖いものを客に見せて銭を取る江戸の興行形態。「お菊の皿」では、本来恐ろしいはずの幽霊屋敷が見物客であふれ、屋台や桟敷まで組まれる娯楽施設へと変貌していく。
あるものを別のものに重ねて表現する、江戸庶民が愛した言葉遊びの技法。「蚊いくさ」では長屋がまるごと城に、蚊の大群が敵軍に見立てられ、格調高い軍記言葉との落差が笑いを生む。
歌舞伎・浄瑠璃で、男女が連れ立って旅する場面を舞踊仕立てで見せる演出様式。仮名手本忠臣蔵の「道行旅路の花聟」は早野勘平とお軽の悲恋を描く名場面として知られる。
仲間内で少しずつお金を出し合い、順番に融通し合う江戸庶民の相互扶助の金融慣習。干物箱では、親父が持ち出すこの話題に身代わりの善公がしどろもどろになる。
奉行など裁く立場の人物が鮮やかな判決を下す構成の落語ジャンル。三方一両損は、大岡越前の粋な裁きで幕を閉じる、この名裁き噺の代表格として知られる。
骨董品や道具の真贋・価値を見極める鑑定眼、またはそれができる人物のこと。「猫の皿」や「井戸の茶碗」では、この目利きの有無が物語の駆け引きそのものを動かす鍵になっている。
髷の根元を結ぶための紙紐。細く見えるが江戸っ子の身なりを支える重要アイテムで、これが切れる・緩むことが噺の小さな騒動のきっかけになることもある。
城で遠方を見張るための高い櫓。蚊いくさでは、家の引き戸をこの物見櫓に見立てるという、大真面目な軍学的発想が笑いを生む。
足にぴったり沿う筒型の作業用パンツ。動きやすさが重視される職人や飛脚、火消しなどの仕事着として重宝され、半纏と組み合わせるのが江戸の労働スタイルの定番だった。
一方が質問を重ね、もう一方がその場しのぎの答えを積み重ねていく形式の落語。「千早振る」「天狗裁き」のように、噛み合わない問答が笑いを生みながらどんどん話が膨らんでいく構造を持つ。
騒ぎや火事場に集まって見物する人々。当事者でもないのに騒ぎに首を突っ込みたくなる人情は、江戸も今も変わらないらしい。落語の騒動シーンには欠かせない存在。
引っ越しを意味する上方言葉。粗忽の釘は上方落語では「宿替え」という演題で演じられ、桂枝雀の十八番としても知られる。
焼酎とみりんを合わせて作る、江戸の庶民に親しまれた夏の酒。「青菜」では、いきな旦那が植木屋をもてなす際にふるまわれる一杯として登場し、江戸の涼を楽しむ酒文化を象徴している。
山中で修行を行う修験道の行者。歌舞伎「勧進帳」では、源義経の一行が追手の目を逃れるため山伏に変装しており、関所の役人・富樫との緊迫したやり取りの前提となっている。
自宅に風呂がない長屋暮らしの江戸っ子にとって毎日の生活インフラだった銭湯。裸の付き合いで身分の垣根が薄れる、庶民のもう一つの社交場だった。
その日稼いだ金はその日のうちに使い切るという、江戸っ子の潔さを表す有名な気質。三方一両損の吉五郎・金兵衛が意地を張り合う場面に、この美意識が息づいている。
江戸幕府が公認した遊郭。単なる遊び場ではなく、独自の作法・言葉・季節行事を持つ一つの文化圏で、多くの落語や人情噺の舞台になった、江戸文化を語る上で欠かせない場所。
めくりや看板に使われる、余白なくびっしりと文字を詰めて書く独特の書体。「文字が太いほど客入りが良くなる」という縁起の意味も込められた、寄席ならではの装飾文字文化。
落語の定番キャラクター。少しトンチンカンだが憎めない長屋の住人で、彼のズレた言動が引き起こす騒動が、多くの噺の笑いの核になっている。
物覚えが悪いが素直で憎めない与太郎を主人公にした一群の落語の総称。「道具屋」「金明竹」などが代表格で、教わったことをそのまま次の場面で誤用してしまう、参加型の笑いを生む江戸寄席文化の伝統的ジャンル。
千利休にちなんで名付けられた、茶席で供される上品な干菓子・饅頭。「茶の湯」では、見栄っ張りの隠居がサツマイモと灯心油で手作りした代物にこの雅な名を勝手に付け、笑いの落差を生む。
主君を持たず禄を離れた武士の身分。「四谷怪談」の民谷伊右衛門や「柳田格之進」のように、仕官の道を絶たれ困窮する浪人の姿は、江戸怪談・人情噺に繰り返し登場する定番の境遇である。
商家の跡取り息子を指す江戸の呼び名。「船徳」の徳兵衛や「明烏」の時次郎のように、道楽が過ぎて勘当されたり、世間知らずで周囲を振り回したりする、憎めない若旦那キャラクターが落語には多く登場する。
刀の傍らに差す短めの刀で、武士の標準装備の一つ。金明竹の言い立てには「横谷宗珉作の脇差」という骨董品の名として登場し、早口の呪文のように語られる。
華美な道具立てを避け、簡素・静寂の中に美を見出す茶の湯の様式。井戸の茶碗に登場する飾り気のない高麗茶碗は、この侘び茶の世界で最高峰の扱いを受けた品とされる。
奉公人が主家から屋号や商売の権利を分けてもらい、独立して店を構えること。文七元結では、婿となった文七が近江屋からのれん分けを受け、もとゆい屋を開く場面に描かれる。
落語のラストに来る仕掛け。話の伏線が一瞬で回収され、客が「ああ!」と笑う瞬間。「地口オチ」「考え落ち」など種類も多く、演目ごとに工夫が違う。